子や孫に日本の心を手渡すという責任

近年、子供たちの間で日本の歴史や精神文化に対する理解が薄れつつあると耳にすることが増えた。楠木正成公の名さえ知らない子供たち、中江藤樹や山田方谷の教えに触れたことのない若者たちが確かに存在している。古事記や日本書紀に記された神話を知らずに育つ子供も少なくない。宮司は、この状況に深い危機感を覚えている。

歴史を知らぬ民族は、己の立つ場所を見失う。過去を知らなければ、未来へ続く道を選ぶこともできない。日本という国がいかなる価値観の上に築かれ、多くの先人がどのような心で国を支えてきたのかを知ることは、単なる知識の習得ではない。自らが「日本人である」という誇りを育むための基盤である。

学校教育が記憶中心の学習に偏り、考える力を育てることがおろそかになっている現実も、宮司は深く案じている。知識を暗記させることに追われ、子供たちの心を育てる教育が置き去りにされている。受験のための学習は役立つ場面もあるが、人間として最も大切なものは、点数では測れない。豊かな感情、思いやる心、美しいものを美しいと感じる感性、これらは試験では測れないが、人生を支える最も大切な力となる。

宮司は、子供たちの未来のために必要なのは、正しい知識以上に「正しい心」だと考えている。よく笑い、誰かのために涙を流し、感謝を忘れない子供は社会を温かくする。挨拶ひとつを大切にし、親や祖先への敬意を持つことのできる子供は、自らを律し、他者を尊び、国を思う心を育む。

拝礼の作法を知らない子供が増えているという現実もまた、心の教育が後回しになっている証といえる。神前で九十度の礼を捧げるという日本人の美しい所作は、単なる形式ではない。敬意を形に表すことで、心そのものが正されていく。礼節を知ることは、自らを磨くことにつながる。

また、情報の真偽を見抜く力を持たせることも大切である。新聞やテレビの報道が全て正しいわけではなく、日本という国を下げることに躊躇しない報道姿勢も存在する。子供たちが偏った情報に流されず、事実を自分の頭で判断できるようになるためには、歴史と伝統を学び、日本人としての軸をしっかり育むことが欠かせない。

宮司が強く願うのは、日本に明るく温かい子供たちが増えていくことである。学歴や肩書だけに価値を見出すのではなく、人としての美しさや豊かさを大切に育ててほしい。親が子に残す本当に大切な遺産は、お金でも地位でもなく、心の強さと温かさである。

日本の未来は、今を生きる子供たちの心の中に宿っている。子や孫に歴史を伝えることは、過去を語る行為ではなく、未来を創る行為である。感謝のできる子、感動できる子、涙を知る子、そのような若い世代が増えるならば、この国は必ず良い方向へ進んでいく。

どうか、日本の心を次の世代に手渡すことを、家庭の中から始めていただきたい。その積み重ねが、やがて日本を再び強く、美しくする力になると宮司は信じている。


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この記事を書いた人

佐藤素心(一彦)。宮司。昭和16年山口県生まれ。元大阪府警勤務。1979年(昭和54年)の三菱銀行人質事件では機動隊員として活躍。事件解決に尽力した。1990年(平成2年)の西成の暴動では自身が土下座をして騒ぎを治めた。その他、数多くの事件に関わり活躍した人物。警察を退職後は宮司となり奈良県吉野町の吉水神社(世界遺産)に奉仕。吉野町の発展に寄与。故・安倍晋三元総理をはじめ、多くの政治家との交流を持つ。現在は長野県下伊那郡阿南町に安倍晋三元総理をお祀りした安倍神像神社を建立し、宮司を務めている。

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