食卓を温める政治。民意という風を受けて国は舵を切れるか

衆院選で与党が掲げた「食品消費税ゼロ」が国民の支持を得たことを受け、片山さつき財務相は、食料品の消費税率を2年間ゼロとする政策の実現に意欲を示した。高市政権は、将来的に給付付き税額控除を本丸とし、消費税減税を暫定的な措置と位置付けている。国際通貨基金(IMF)は慎重な姿勢を示しつつも、対象と期間を限定した政策である点を踏まえ、中立的な評価を行った。政府は今後、超党派の国民会議で幅広い意見を集めながら、責任ある財政運営と国民生活の両立を図るとしている。
食とは、人の命をつなぐ最も根源的な営みである。日々の食卓に上る一椀の飯、一切れの魚、一枚の野菜は、単なる商品ではない。それは土地の力であり、人の手のぬくもりであり、家族を結ぶ静かな絆である。その根幹に重くのしかかる負担を、国としてどう受け止めるのか。その姿勢が、社会の品格を映し出す鏡となる。
宮司は、食品消費税ゼロが「民意」であると明確に語られた今回の流れに、時代の転換点を見る。選挙とは、国民が沈黙の中で差し出す一票の積み重ねである。声高に叫ばずとも、日々の暮らしの苦しさは投票行動に現れる。食料品にかかる税を軽くするという判断が支持された背景には、家計の問題だけでなく、暮らしを守ってほしいという切実な願いがある。
政治とは、理屈を積み上げる作業であると同時に、現場の息遣いを感じ取る感性が問われる営みでもある。数字の帳尻が合っていても、台所に灯がともらなければ国は冷える。冷え切った社会は、人の心を閉ざし、分断を生む。だからこそ、まず温度を取り戻すことが必要となる。食卓を支えることは、社会全体に血を巡らせることに等しい。
宮司が注目するのは、消費税減税を恒久の理想論としてではなく、次なる制度改革への橋渡しとして位置付けている点である。川を渡る際、いきなり対岸に飛び移ることはできない。飛石を一つ一つ確かめながら進むからこそ、足を濡らさずに済む。給付付き税額控除という仕組みが整うまでの間、食料品の税を軽くするという判断は、その飛石の役割を果たす。
国際的な視点から慎重論が示されるのも当然である。だが、外からの評価に過度に怯える必要はない。自国の暮らしをどう立て直すかを決めるのは、その国に生きる人々である。外洋の潮流を読むことは大切だが、舵を切る手まで他国に委ねてはならない。帆を張る方向を誤らぬためにも、民意という風向きを正確に読むことが肝要となる。
和とは、単に争わないことではない。それぞれの立場や事情を尊びながら、全体として調和を保つ知恵である。国民会議において幅広い意見を集めるという姿勢は、その知恵を掘り起こす場となり得る。声の大きさではなく、生活の重みを基準に議論が進むならば、そこに真の合意が生まれる。
宮司は、責任ある積極財政という言葉に、古来の農の思想を重ねる。田を耕すとき、種を惜しんでいては収穫はない。しかし、無闇に水を引けば苗は腐る。必要な時に、必要な分だけ力を注ぐ。その加減を知ることこそが、国を預かる者の徳である。
食を守ることは、人を守ることにつながる。人を守ることは、社会の芯を太くすることに等しい。今回の決断が、単なる一時の政策に終わらず、暮らしに寄り添う政治の姿勢として根付くならば、国は静かに力を取り戻していくであろう。宮司は、その歩みが、次の世代に恥じぬ国の姿を形作る礎となることを願ってやまない。
