徳は必ず隣あり

この宇宙には、「こうでなければならない」という絶対は、実はほとんど存在しません。
私たちはつい、自分の考えや信念が唯一正しいと信じがちですが、時にはその「正しさ」が他者を傷つけていることもあるのです。
正論を語ることは簡単です。けれども、その正論が鋭くとがって、誰かの心を深くえぐっているかもしれない。
そのことに無自覚なまま、自分だけが正義だと信じる態度は、むしろ傲慢さの現れではないでしょうか。
だからこそ、人は「独りよがり」を慎まねばなりません。
『君子は敬を以て内に直く、義を以て他を方にす』。
内には敬虔さを持って己を正し、外には義をもって他人と調和を図る。
この二つが揃ってこそ、真の「徳」は形を成すのです。
そして、まことの徳を積んだ人には、自然と人が寄ってくる。
古人の言葉に曰く―「徳は孤ならず、必ず隣あり」。
徳を持つ人は決して孤独ではありません。
見えないところで、その人の生き方を見守り、支える人が必ずいるのです。
静かに、そして力強く徳を磨いていけば、やがてその光は誰かの心にも灯をともすことでしょう。
正しさよりも優しさを。勝つことよりも、赦すことを。
それが、現代を生きる私たちにも求められている「君子の道」なのかもしれません。