真に恥ずべきこと

人は誰しも、時に自らの境遇を恥じることがある。だが、宮司は思うのだ。恥じるべきことと、そうでないこととを、見誤ってはならない。
貧しさは恥ではない。衣食に窮する暮らしを余儀なくされても、心まで貧しくなる必要はない。むしろ、本当に恥ずべきは、貧しさに甘んじ、志す心を忘れてしまうことである。どれほど財が乏しくとも、天を仰ぎ、志を立てて生きる者は、すでに高貴な魂を持っている。
地位が低いことも、恥ではない。人は皆、それぞれの役割を持って世に生きる。たとえ表舞台には立たずとも、陰で支える尊い務めがある。だが、その立場にあって、自らの力を磨かず、学ぶことを怠るならば、それこそが恥ずべきことである。地位は時に与えられるものであるが、能力は自らの鍛錬によってのみ得られるものだからだ。
年を重ねることも、恥ずかしきことではない。老いるとは、長き年月を生き抜いてきた証であり、尊敬に値することである。しかし、歳を重ねるなかで、生きる目的を見失い、ただ日を消費するように生きることがあれば、それは嘆かわしい。人は何歳になろうとも、自らの存在に意味を問い続け、誰かのために尽くす志を持ち続けるべきである。
人の価値は、金や地位や若さによって決まるものではない。宮司は、そう断言する。大切なのは、いかなる境遇にあっても、恥を知り、誇りを失わず、志を持ち続けることである。己を高める努力を怠らず、心の光を絶やさずに歩む者こそ、真に尊き人であると宮司は信じている。