天皇と国民の絆が照らす未来

天皇(すめらぎ)の おはしますれば 日本(ひのもと)の
國民(おほみたから)の 國は滅びず
詠み人:佐藤素心
天皇が「おはします」ということは、単なる存在の確認ではなく、日本の国の中心に大御心が常に働いていることを意味する。さらに「おほみたから」とは、国民こそが最大の宝であるという古来の認識であり、為政者が民を尊び、民がまた国を支えるという相互の関係を表している。この二つが結び合う限り、日本は滅びることはないのである。
この歌に込められた精神は、歴史の荒波を越えてきた日本の姿と重なる。戦乱や災害、敗戦と荒廃の時代を経てもなお立ち上がる力があったのは、国の根底に祈りと文化の層が生きていたからである。祖先を敬い、祭礼を行い、日々の暮らしの中で礼を重んじる。こうした営みが目に見えぬ根となって国を支え、幹や枝が折れても再び芽吹かせてきた。
愛国の実践は、声高に叫ぶことではなく、日々の奉仕にある。家族を大切にし、仕事を誠実に果たし、地域の清掃や祭りの準備に汗を流す。災害時に黙々と支える人々の姿こそ、おほみたからの光である。国を築くのは大人物の偉業だけでなく、小さな善を積み重ねる無数の民の行いなのである。
学ぶべきは、過去をただ美化することではない。痛みや失敗も含めて歴史を受けとめ、正しく継ぐことである。他国を貶める必要はなく、自国を誇りとすることがそのまま国際社会で尊敬を得る道につながる。己を立てることが、相手をも立てることになるのである。
明日への希望は、外から与えられるものではない。挨拶を丁寧にし、約束を守り、感謝を言葉にし、祈りを絶やさない。これらは小さな作法に見えるが、人の心を整え、社会の空気を澄ませる力を持つ。空気が清くあれば、不安や分断に呑まれることはない。
子どもたちには、言葉・礼・物語の三つを伝えねばならない。和歌や祝詞に宿る言葉の美しさ、姿勢や所作に込められた礼の力、そして祖先の歩みを語り継ぐ物語。そのすべてが未来を明るく照らす灯となる。家庭と学校と地域が共に育むとき、この国の未来は盤石となる。
現代において技術や経済の発展は不可欠である。しかし利便が礼を凌駕し、速度が熟慮を追い越してはならない。伝統を守る足をどっしりと据えつつ、新しいものを軽やかに取り入れる。そこに日本の真の強さがある。
宮司がこの国が滅びぬという確信は、天皇の大御心に根ざし、国民がおほみたからであり続けることにある。その証は、民の小さな日常の営みにほかならない。今日も道に落ち葉を見つけたなら拾い、困る人に手を差し伸べ、祈りを捧げる。その積み重ねこそが国を照らす光となるのである。
