葉隠に生きる ― 困難を力に変える心

宮司は人生を歩む中で、人は誰しも困難に出会うものだと痛感している。学校でも、職場でも、家庭でも、あるいは国の在り方を思うときでさえ、苦難の種は尽きない。では、その困難に直面したとき、私たちはどう向き合うべきか。そこにこそ人物の高さがあらわれる。
人間の成長は、苦悩を避けることで得られるものではない。むしろ逆境に真正面からぶつかり、そのなかで鍛えられる心の免疫力こそが、人生を支える大黒柱となる。何事もその都度悩み苦しんで立ち止まっていてはならない。なるようになる、という揺るぎない覚悟を持って歩むことが大切である。過去を恨むのではなく、未来を切り拓く一歩を進める心を養わねばならない。
葉隠は、ただ困難を耐え忍べと教えるのではない。困難を喜び、勇んで挑むべきだと説く。これは一見、常人には到底難しい境地に思える。しかし、困難を「鍛錬の場」と捉えることができれば、その人はもはや試練に支配されるのではなく、試練を己の糧としていく存在となる。吹っ切れたとき、人ははじめて大きな成長の段階を超えるのである。
「水増されば船高し」という喩えが示すように、水位が上がれば船は浮力を得て高みに至る。同じように、苦難に出会えば人は必ず成長できる。国家もまた同じである。幾多の困難に打ち勝ってきたからこそ、日本は今に続いている。国難のたびに団結し、先人が勇み進んできた姿を思えば、我々もまた困難に歓喜して立ち向かうべきである。愛する祖国を未来へと受け渡すために。
困難を避けるのではなく、困難を味方に変える。その姿勢をこそ、宮司は日本人が大切に守り伝えていくべき心だと信じる。
葉隠聞書
大難大変に逢うても動転せぬといふはまだしきりなり。
大変に逢うては歓喜踊躍して勇み進むべきなり。
一関越えたる所なり。
「水増されば船高し」というが如し。
< 訳 >
大変な困難なことに遭遇しても、気を転倒させないというぐらいではまだまだ未熟者である。むしろ、その大変困難な出来事を大いに喜び、勇んで断固として突き進むようでなければならない。これはいうならば、一つの段階を超えて「吹っ切れた」ところである。水がどんどん増してきたら舟が高くなるようなものである。人間も困難にぶっかれば大きく成長するようなものである。
