日本人の役割を見つめて

宮司は、日本という国の姿を改めて思う。古来、日本は多くの文化を受け容れ、自らのものとして磨き上げ、調和させてきた。外からの影響を恐れず、拒まず、むしろ取り入れて豊かにしてきたのが、日本人の知恵と気質だった。その柔らかな強さこそ、世界に誇るべき日本の国柄である。

八百万の神々を奉るという考え方には、どんな存在や出来事にも畏敬と感謝の念を抱き、そこから学びを得ようとする精神が宿っている。自然、道具、季節の移ろい、人との出会い。すべてに意味を見いだし、謙虚に向き合う心は、現代の国際社会においても、日本人が果たすべき役割の核心だろう。

現代社会は、情報の洪水と価値観の衝突に満ちている。自分の正しさだけを押し通すのではなく、他者を理解し、異なるものを調和させる姿勢がなければ、世界は分断を深めるばかりだ。宮司は、私たちがこの「受容と調和」の心をもって国際社会と向き合うことが、日本人の重要な使命だと考える。

その心は、私たちの生活の細部にも息づいている。たとえば、和室の畳を歩くときのスリ足という作法。静かに、丁寧に、一歩を踏み出す。小さな所作の中にも、周囲を乱さず、調和を保つという価値観が表れている。この感覚は、単なる礼儀作法ではない。人や環境に対する敬意、そして目立たずとも世界に調和をもたらす謙虚な強さを体現しているのだ。

宮司は、これこそが現代を生きる日本人が世界に伝えるべき精神だと信じている。声高な主張ではなく、行いと佇まいで示す美徳。家族や友人との間で思いやりをもって接し、社会の中で誠実に務めを果たすこと。そうした一つひとつの小さな行いが、やがて国の品格を形づくり、世界に安心と信頼を届ける。

祖先から受け継いだこの「日本のこころ」を、私たちは次の世代に手渡していかなければならない。受容と調和の文化、八百万の神々への畏敬、そして丁寧な所作に込められた道徳心を忘れず、未来に向けて歩み続けること。それが、日本人としての誇りを守る道であり、世界に必要とされる役割を果たすことにつながるのだ。

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この記事を書いた人

佐藤素心(一彦)。宮司。昭和16年山口県生まれ。元大阪府警勤務。1979年(昭和54年)の三菱銀行人質事件では機動隊員として活躍。事件解決に尽力した。1990年(平成2年)の西成の暴動では自身が土下座をして騒ぎを治めた。その他、数多くの事件に関わり活躍した人物。警察を退職後は宮司となり奈良県吉野町の吉水神社(世界遺産)に奉仕。吉野町の発展に寄与。故・安倍晋三元総理をはじめ、多くの政治家との交流を持つ。現在は長野県下伊那郡阿南町に安倍晋三元総理をお祀りした安倍神像神社を建立し、宮司を務めている。

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