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安倍晋三元総理銅像建立

礼に始まり、礼に終わる。剣道に宿る大和魂と人の道

剣道では、戦う者同士が向き合い、まず一礼をする。竹刀を交え、互いに一歩も譲らぬ勝負をした後も、勝った者、負けた者がともに姿勢を正し、再び礼をする。「礼に始まり、礼に終わる」といわれる所以である。宮司は、この礼の中に、日本人が古くから守り伝えてきた精神の美しさを見る。

礼とは、単なる作法ではない。形だけ頭を下げればよいというものでもない。目の前に立つ相手を一人の人間として敬い、その存在に感謝する心が形となって現れたもの。それが礼である。

試合の相手は、倒すべき敵ではない。自分を鍛え、自分の未熟さを教え、自分を一段高いところへ引き上げてくれる大切な存在である。強い相手と対峙すれば、自分の技がどこまで通用するのかを知ることができる。敗れれば、自分に何が足りなかったのかが見えてくる。勝ったとしても、相手がいなければ、その勝利も成長もなかった。だからこそ、勝敗が決した後には、相手に対して心から頭を下げるのである。

人は、勝てば驕りやすく、負ければ相手を恨みやすい。勝った者は、自分の力だけで勝ったと思い上がる。負けた者は、言い訳を探し、相手や周囲のせいにしたくなる。しかし、剣道の礼は、そのどちらの心も戒める。勝った時ほど謙虚であれ。負けた時ほど潔くあれ。勝敗を超えて相手に感謝し、己を省みよという教えである。

宮司は思う。真の勝負とは、相手を打ち負かすことだけではない。最も手ごわい相手は、自分の中にいる。恐れ、慢心、怒り、焦り、怠け心、そして負けを認めたくない弱さ。剣を通して向き合うべきものは、最後には己自身なのである。

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相手の一撃によって、自分の隙を知らされる。相手の気迫によって、自分の覚悟の浅さを知らされる。相手の礼によって、自分の心の乱れを知らされる。そうして人は、己の弱さを知る。弱さを知ることは、恥ではない。己を知らぬまま強がることの方が、よほど危うい。弱さを正面から認め、そこから鍛え直す者にこそ、本当の成長がある。

これは、剣道だけに限った話ではない。仕事でも、家庭でも、社会でも、人は誰かと向き合いながら生きている。意見の違う者、競い合う者、自分に厳しい言葉を向ける者。そうした相手を、ただ敵と決めつけて排除していては、人間は成長できない。耳の痛い言葉の中に、自分を改める種があることもある。衝突の中で、自分の未熟さを知ることもある。相手がいたからこそ、自分では見えなかったものが見えてくるのである。

もちろん、道理に反するものへ迎合する必要はない。守るべきものを守るためには、断固として立たねばならぬ時もある。しかし、戦う時にも相手の人格まで踏みにじらない。勝った後に侮らない。負けた後に卑屈にならない。憎しみに心を支配させず、正々堂々と己の道を貫く。それが武士道であり、日本人が尊んできた大和魂である。

今日の社会では、勝ち負けだけが強く意識されているように思える。自分が正しいと示すために相手を罵り、失敗した者を大勢で責め立て、勝者が敗者を嘲笑する。そこには、相手によって自分も学び、鍛えられているという感謝がない。礼を失った勝利は、やがて驕りとなる。感謝を失った強さは、いずれ傲慢へ変わる。

本当に強い人間は、相手を敬うことができる。自分の弱さを認めることができる。敗北から逃げず、そこに学びを見いだすことができる。そして勝利した時にも、相手がいてくれたからこその勝負であったと感謝できる。礼とは、弱い者が強い者に従うためのものではない。己を律することのできる強い者が示す、魂の品格なのである。

神前において人が頭を下げるのも、己を卑下するためではない。自分一人の力で生きているのではないことを知り、神々、祖先、家族、友、そして多くの御縁に支えられていることへ感謝するためである。剣道の礼もまた、その心に通じている。対峙した相手との御縁を尊び、その相手によって磨かれた己を、次の修養へと進ませる祈りの形である。

宮司は、令和を生きる若い人たちに伝えたい。人と競うことを恐れてはならない。負けることを恥じてはならない。しかし、礼を失ってはならない。勝った時には相手へ感謝せよ。負けた時には己を省みよ。そして、どのような相手からも学ぶ心を持て。その積み重ねが、人間を大きくし、魂を強くする。

礼に始まり、礼に終わる。その短い所作の中には、感謝、謙虚、潔さ、忍耐、修養という、日本人の生き方が凝縮されている。相手を敬うことは、自分を磨くことである。己の弱さを知ることは、真の強さへの第一歩である。

甦れ、勝って驕らず、負けて腐らず、対峙した相手に感謝できる日本人の心。甦れ、礼を重んじ、己を磨き、人として守るべき道理を貫く大和魂。

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この記事を書いた人

佐藤素心(一彦)。宮司。昭和16年山口県生まれ。元大阪府警勤務。1979年(昭和54年)の三菱銀行人質事件では機動隊員として活躍。事件解決に尽力した。1990年(平成2年)の西成の暴動では自身が土下座をして騒ぎを治めた。その他、数多くの事件に関わり活躍した人物。警察を退職後は宮司となり奈良県吉野町の吉水神社(世界遺産)に奉仕。吉野町の発展に寄与。故・安倍晋三元総理をはじめ、多くの政治家との交流を持つ。現在は長野県下伊那郡阿南町に安倍晋三元総理をお祀りした安倍神像神社を建立し、宮司を務めている。

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