男系皇統を未来へつなぐ。皇室典範改正に見る、日本國の覚悟

改正皇室典範が、参議院本会議において賛成多数で可決され、成立した。昭和二十二年の施行以来、実質的な内容を伴う初めての本則改正である。今回の改正によって、女性皇族が御婚姻後も皇族の御身分を保持されること、そして旧十一宮家の男系男子を養子として皇室にお迎えすることが可能となった。養子となった方御本人には皇位継承資格を付与せず、その男系の子孫たる男子に継承資格を認める仕組みである。改正案の二本柱と制度の概要は、皇族数の確保と男系皇統の維持を両立させようとするものであり、日本國の根幹に関わる大きな一歩である。
宮司は、この知らせに接し、まず静かに神前へ報告申し上げたいと思う。
皇位とは、その時代の都合によって新しくつくる地位ではない。歴代天皇から歴代天皇へ、祈りと祭祀と御血筋が受け継がれてきた、日本國の命そのものである。政治制度の一部としてだけ考えてはならない。選挙で選び直すものでもなければ、社会の流行に応じて姿を変えるものでもない。初代神武天皇以来、連綿と続いてきた男系の皇統は、日本人が祖先から託され、未来の子孫へ渡さなければならない尊い御宝なのである。
皇室は、日本國の中心にあって、国民の安寧と世界の平和を祈り続けてこられた。天皇陛下は権力によって国民を従わせる御存在ではない。祈りによって国民を一つに結び、世の平らかなることを願われる祭祀王であられる。この御存在が二千年以上にわたって受け継がれてきたからこそ、日本は時代が変わり、政治体制が変わっても、日本であり続けることができた。
男系皇統の維持を語ると、「男女平等に反する」「時代に合わない」と批判する者がいる。しかし、皇位継承は、男女の能力や人間としての価値を比較する問題ではない。男性が女性より優れているという話でもない。長い歴史の中で一度も変わることなく守られてきた皇統の原則を、これからも受け継ぐかどうかという問題なのである。
伝統とは、古いから守るのではない。幾多の危機を越え、多くの先人が命懸けで守り、次代へ伝えてきたものだからこそ重いのである。自分たちの世代だけで、その価値を軽々しく断じてはならない。私たちは皇統を自由に処分できる所有者ではない。祖先から一時的にお預かりし、傷つけることなく次の世代へお渡しする責任を負う者なのである。
今回、旧十一宮家の男系男子を養子として皇室にお迎えできる道が開かれたことは、極めて重要である。旧宮家の方々は、昭和二十二年、占領下において皇籍を離脱された。長い皇室の歴史から見れば、皇籍を離れていた期間は決して長いものではない。皇統に属する男系男子を皇室へお迎えし、男系の御血筋を未来へつなぐことは、歴史の筋を曲げるものではなく、本来あるべき流れを回復する道である。
養子となった方御本人には皇位継承資格を付与せず、その後に生まれる男系の男子に資格を認めるという制度にも、慎重な配慮が表れている。突然、皇位継承順位を大きく動かすのではなく、現在の皇位継承の流れを尊重しながら、将来への道を静かに整えるものだからである。
女性皇族が御婚姻後も皇族として残られる制度も、皇室の御活動を支えるために意味がある。女性皇族方は、長年にわたり祭祀や公務に真摯に取り組まれ、国民に温かく寄り添ってこられた。御婚姻によって培われた御経験や御力が、ただちに皇室から失われることを防ぐ意義は大きい。
同時に、御婚姻後も配偶者とお子様は一般国民とされる。これは、女性皇族の御身分保持を、女性宮家や女系継承へ自動的につなげないための重要な一線である。女性皇族方への敬意と、男系皇統の原則を守ることは、決して矛盾しない。むしろ両者を慎重に両立させるところに、日本人の知恵が求められる。
宮司は、皇族方を制度の部品のように扱ってはならないと思う。養子として皇室に入られる方にも、婚姻後に皇族の御身分を保持される女性皇族にも、一人の人間としての人生がある。大きな責任と覚悟を背負われることになる。その御心に国民が寄り添い、敬意をもって支えることなくして、制度だけを整えても皇室の安泰にはつながらない。
皇室を守るとは、皇族方にあらゆる負担を押しつけることではない。国民一人ひとりが皇室の歴史を学び、なぜ男系皇統が守られてきたのかを知り、皇族方の御苦労に思いを致すことである。制度をつくるのは国会であっても、その制度を支えるのは国民の敬愛と感謝の心なのである。
今回の改正ですべての課題が解決したわけではない。衆参両院では、安定的な皇位継承策について引き続き検討する旨の付帯決議も採択された。将来の議論においても、目先の世論や一時的な政治判断に流されず、男系皇統という原則を揺るがせにしてはならない。
皇位継承の問題を、単なる人数合わせにしてはならない。皇族数を確保することは必要である。しかし、そのために皇統の本質を変えてしまえば、守るべきものを守ったことにはならない。枝葉を保つために、根を切ってはならないのである。
國體とは、法律の条文だけに存在するものではない。天皇陛下を中心として、祖先と子孫、国土と国民が祈りによって結ばれている日本國の形である。その中心にある皇統が揺らげば、日本人は自らの歴史の根を失う。根を失った大樹は、どれほど葉を茂らせても、やがて倒れる。
今回の皇室典範改正は、その根を未来へ残すための一歩である。長く閉ざされていた旧宮家の男系男子を皇室へお迎えする道が、ようやく法律の上で開かれた。その意義は、今日や明日の政治だけでは測れない。百年後、千年後の日本人が、なお変わらぬ皇統を仰ぐことができるか。その未来に関わる決断なのである。
宮司は願う。皇室を政争の道具にしてはならない。皇統を思想対立の材料にしてはならない。静かに歴史へ耳を澄まし、先人が何を守ってきたのかを知り、未来の日本人に何を残すべきかを考えなければならない。
甦れ、天皇陛下の祈りを中心に、祖先と子孫を一つに結ぶ日本國の心。甦れ、時代の波に流されず、万世一系の皇統を守り抜く日本人の覚悟。
男系皇統を未来へつなぐ。それは、過去に固執することではない。日本が日本であり続けるために、未来へ責任を果たすことなのである。
