年の瀬が近づくと、神社の境内には古いお札やお守りを納める人の姿が増えてくる。一年のあいだ家を守り、身を守ってくださったものを、感謝とともにお返しする。日本人が長く大切にしてきた、年の終わりの美しい習わしである。
一方で、「どこに返せばよいのか分からない」「遠方の神社でいただいたお守りはどうするのか」「引き出しに何年も入ったままになっている」という声もよく耳にする。ここでは、宮司が日頃尋ねられることに答える形で、お札とお守りの返し方を、ひとつずつお伝えしてゆきたい。
何年も返しそびれてしまった方も、どうか気に病まないでください。気づいたときが、お返しの時です。
お札とお守りは、なぜ返すのか
お札は、神様の御神威をいただいて家にお祀りするものであり、お守りは、それを身に付けて持ち歩けるようにしたものである。どちらも、ただの紙や布ではない。神社で祈りを込めて奉製され、お授けされたものだ。
神道では、常に新しく清らかであることを尊ぶ。伊勢の神宮が二十年ごとに社殿を建て替える式年遷宮も、その心のあらわれである。お札やお守りを一年ごとに新しくするのも、同じ考えに基づいている。古いものを粗末に扱うのではなく、一年の感謝を込めてお返しし、新たな御神威をいただく。この巡りを繰り返すことで、家も人も清々しく保たれるのである。
返す時期。年末から小正月までが目安
お札とお守りは、いただいてから一年ほどを目安にお返しする。最も多いのは、年末から年始にかけての時期である。新しい年のお札を受ける際に、古いお札を納める。これが最も自然な形だ。
また、一月十五日前後の小正月には、多くの神社でどんど焼きや左義長と呼ばれる行事が行われる。正月飾りやしめ縄、古いお札やお守りを焚き上げ、その火で一年の無病息災を祈るものだ。この日に合わせて納めるのもよい。
お守りの場合、願いが叶ったときがお返しの時である。合格祈願であれば合格したとき、安産祈願であれば無事に出産を終えたときに、お礼参りを兼ねて納めたい。年が明けていなくとも、感謝を伝えることに遅すぎることはない。
返す場所。いただいた神社へが基本
お札やお守りは、いただいた神社にお返しするのが基本である。多くの神社には、古札納所と呼ばれる古いお札を納める場所が設けられている。社務所で「古いお札を納めたい」と伝えれば、案内してもらえる。
遠方の神社でいただいたもので、直接返しに行くことが難しい場合は、近くの神社に納めてもよい。伊勢の神宮のお札である神宮大麻は、全国の多くの神社で頒布されているため、近くの神社でお返しできる。ただし、神社によっては他所のものを受け付けていないこともあるので、社務所で一言確かめておくと安心だ。
気をつけたいのは、神社のものは神社へ、寺のものは寺へ返すということだ。そうすれば、どちらにも失礼がない。どちらでいただいたものか分からなくなった場合は、神社で相談すればよい。きっと快く教えてくれるはずだ。
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郵送で返すこともできる
近くに神社がない、体が不自由で足を運べないといった事情がある人も少なくない。そうした場合、郵送での返納を受け付けている神社も多い。
郵送する前には、必ず神社の公式サイトを見るか、電話で問い合わせて、受け付けているかどうかを確かめたい。受け付けている場合は、お札やお守りを白い紙に包み、封筒に「古札在中」と書き添えて送る。お焚き上げのお初穂料を同封するよう求められることもある。送り方は神社によって異なるので、案内に従ってほしい。
納めるときのお気持ち
古札納所には、お賽銭箱のような箱が置かれていることが多い。お焚き上げには手間も費用もかかるため、納める際に、いくらかのお気持ちを添えられるとよい。金額に決まりはない。一年守っていただいた感謝を、自分なりの形で表せばよい。
納めたら、社殿に向かって手を合わせ、一年間の御加護に感謝を申し上げる。お札やお守りをただ置いて帰るのではなく、この感謝の拝礼までを一つの作法と考えたい。
やむを得ず家で処分するとき
どうしても神社に納めることができない場合もあるだろう。そのときは、お札やお守りを白い紙に包み、塩をひとつまみ振って清める。そして感謝の言葉を心の中で述べてから、他のごみとは分けて出す。
ただし、これはあくまで、どうしても難しいときの方法である。宮司としては、できる限り神社に納めてほしいと願っている。神社にお返しすることは、神様とのご縁をもう一度結び直すことでもあるからだ。
新しいお札をお迎えする
古いお札をお返ししたら、新しいお札をお受けして神棚にお祀りする。神棚がない家であれば、お札立てを用いて、目線より高い清らかな場所にお祀りすればよい。
年末に新しいお札を迎え、清らかな気持ちで正月を迎える。それが、何よりも清々しい一年の締めくくりだと思う。
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感謝で終わり、感謝で始める
お札やお守りを返すという行いは、一年を感謝で締めくくり、新しい年を感謝で始めるための節目である。引き出しの奥に眠ったままのお守りがあれば、この機会に、そっと神社へお返ししてみてはどうだろう。
宮司は、神社を訪れる人々が古いお札を手に、静かに頭を下げる姿を見るたびに、日本人の心の奥深さを思う。目に見えない御加護に感謝し、形あるものを丁寧に扱う。その心こそが、この国の美しさなのである。
皆さまの新しい年が、清らかで穏やかな一年となりますように。宮司も、心からお祈りしております。
安倍神像神社へのご参拝・お問い合わせ
長野県阿南町の安倍神像神社では、参拝の方をお迎えしている。古いお札やお守りの納め方で分からないことがあれば、気軽に尋ねてほしい。
安倍神像神社 公式サイトへ