英霊に手を合わせる自由を、取り戻せ。靖国参拝と高市首相の静かな覚悟

高市早苗首相がテレビ番組の中で靖国神社参拝について「互いに国のために亡くなった方々に敬意を捧げ合える環境をつくることが目標だ」「環境を整えるために努力している」と語った。宮司はこの言葉を聞き、静かに目を閉じた。日本の首相が、靖国を語ることすら憚られる時代が長く続いた。その重苦しい空気の中で、高市首相が英霊への思いを公の場で口にされたことの重みを、宮司は深く受け止めている。

靖国神社とはいかなる場所か。宮司が神職として歩んできた長い年月の中で、この問いを幾度となく胸に問い直してきた。そこは戦争を称揚する施設でも、政治的イデオロギーを振りかざす舞台でもない。国のために命を散らされた御霊が鎮まる、鎮魂と感謝の聖域だ。「あなた方のおかげで、今の日本があります」と頭を垂れる、その一点にこそ参拝の本義がある。それは日本人が古来より守り伝えてきた、祖先を敬い、縁に感謝し、見えぬ御霊に向かって手を合わせるという、魂の作法に他ならない。

大和魂という言葉が、近年ともすれば軽く扱われる風潮がある。宮司にはそのことが口惜しくてならない。大和魂とは武張った勇猛さのことではない。散りゆく花に美を見出し、流れる水のように柔らかくありながら、岩をも穿つ意志の強さを内に秘める。見えない縁と恩に頭を下げ、己よりも大きなものに命を捧げることを厭わない。その精神性の深みこそが、大和魂の真の姿だ。靖国に眠る御霊の方々が守ろうとされたのも、まさにこの日本人の心のかたちそのものではなかったか。

かつて安倍晋三元総理は、その御魂を天に召された後も、宮司の胸の中で生き続けている。生前の安倍総理は繰り返し英霊への思いを語り、首相在任中に靖国参拝を果たされた。あの時、米国から「失望した」という言葉が発せられ、周辺国が声高に非難した。宮司はそのニュースに接するたびに、強い憤りと悲しみを覚えた。自国の英霊に手を合わせることが、なぜ他国の承認を必要とするのか。その理不尽な構造の中で、安倍総理は凛として立たれた。今もその御霊を神前にお祀り申し上げる宮司には、あの姿が昨日のことのように目に浮かぶ。

高市首相が「環境を整えてから」と言葉を選ばれたことに、一部からは「踏み込みが足りぬ」との声も聞こえてくる。しかし宮司には、その言葉の奥に、英霊への参拝という行為を外交の道具や政治的パフォーマンスに貶めまいとする、静かな矜持が宿っているように感じてならない。本当の参拝とは、カメラの前で演じるものではなく、御霊と自らが一対一で向き合う、その無言の対話の中にこそある。高市首相が目指す「互いに戦没者へ敬意を捧げ合える世界」は、決して絵空事ではない。だがそれを実現するためには、日本人自身が英霊への感謝の心を、外圧にも世論にも揺るがされることなく持ち続けることが先決だ。

戦後八十年余り、この国の一部のメディアと政治勢力は、靖国を「軍国主義の象徴」と貶め、英霊を悼む心を持つ者を「右翼」と切り捨て続けた。そうした言論の圧力の中で、日本人の魂の根っこが徐々に削られてきたと、宮司は長い年月をかけて痛感してきた。しかし宮司が神域に身を置いて見てきたのは、それでも絶えることなく続く参拝者の流れだ。政治的な喧騒とは無縁に、黙々と手を合わせ、静かに涙をぬぐう人々の姿がある。大和魂は死んではいない。ただ、表に出ることを長く抑えられてきただけだ。

宮司は、日本人一人ひとりに問いたい。英霊の方々が命を懸けて守ろうとしたものが何であったか、一度でもよいから、静かに考えてみていただきたい。靖国参拝の問題は、政治家の行動の問題である以前に、我々日本人が先人の死とどう向き合うかという、魂の問いだ。高市首相が「環境を整える」と言われるならば、その環境とは外交の文脈だけではなく、この国の民が英霊への感謝を当たり前のこととして語れる、精神的な土壌のことでもあるはずだ。その土壌を耕すのは、政治家の仕事ではなく、この国に生きる我々一人ひとりの仕事だ。

甦れ、日本。英霊に手を合わせる自由を、誰憚ることなく取り戻せ。大和魂の灯を、この手で次の世代へと渡していこう。

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この記事を書いた人

佐藤素心(一彦)。宮司。昭和16年山口県生まれ。元大阪府警勤務。1979年(昭和54年)の三菱銀行人質事件では機動隊員として活躍。事件解決に尽力した。1990年(平成2年)の西成の暴動では自身が土下座をして騒ぎを治めた。その他、数多くの事件に関わり活躍した人物。警察を退職後は宮司となり奈良県吉野町の吉水神社(世界遺産)に奉仕。吉野町の発展に寄与。故・安倍晋三元総理をはじめ、多くの政治家との交流を持つ。現在は長野県下伊那郡阿南町に安倍晋三元総理をお祀りした安倍神像神社を建立し、宮司を務めている。

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